参加型SNS『目覚めのリレー朗読』&『朗読原稿』

あなうさピーターのはなし THE TALE OF PETER RABBIT

「あなうさピーターのはなし THE TALE OF PETER RABBIT」

作 ベアトリクス・ポッター Beatrix Potter
訳 おおくぼゆう   

▼挿絵付き原文はこちら▼ 
https://www.aozora.gr.jp/cards/001505/files/51344_38342.html

 

 むかしむかし あるところに 4ひきの こうさぎが おりました。 なまえは 
それぞれ
フロプシー、
モプシー、
カトンテル、
ピーターです。
 4ひきは おかあさんと いっしょに とってもおおきな モミのきの したにあ
る あなのなかに すんでいました。

 あるひの あさ、 あなうさママが いいました。
「さあ おまえたち、 のはらのなかや こみちのさきで あそんでらっしゃい。 
でも、 マグレガーおじさんの おにわには いっちゃダメよ。 むかし おとうさ
んが そこで ひょんなことから マグレガーおばさんに つかまって パイに さ
れたんだから。」

「いってらっしゃい、 きを つけるのよ。 おかあさん、 るすに してるから。」

 それから あなうさママは かごと かさを てにもって、 もりの むこうの 
パンやさんへ むかいました。 かったのは 1きんの くろパンと ぶどうパンを
 5つです。

  2

 フロプシーと モプシーと カトンテルは とっても いいこでしたので、 こみ
ちを くだって クロイチゴつみに でかけました。

 けれども ピーターは ひどく やんちゃでしたので、 そのまま マグレガーお
じさんの おにわに いちもくさん、 いりぐちの さくの したを むりくり く
ぐりぬけたのです!

 すぐさま レタスと インゲンを かじって おまけに ハツカダイコンまで。

 すると どうも きぶんが わるくなったので おくすりの パセリを さがすこ
とに しました。

 ところが キュウリの なえばこを まわったところで でくわしたのが、 なん
と マグレガーおじさん!

 マグレガーおじさんは よつんばいで キャベツのなえを うえていたのですが、
 とびあがって ピーターを おいかけます。 くわを ふりふり さけぶのです。
 「まてえ、 ぬすっと!」

  3

 ピーターは もう びっくりして ふるえあがって にわじゅうを かけまわりま
した。 それというのも いりぐちが どこにあったのか わからなくなったのです。
 しかも キャベツばたけで くつを かたっぽ、 ジャガイモばたけで もうかた
っぽを なくしてしまいました。

 くつも ないので よつあしで はしると ぐんぐん はやくなって、 うまくい
けば にげられたと おもうのですが、 うんわるく スグリの あみに つっこん
でしまい、 うわぎの おおきな ボタンが ひっかかってしまったのです。 ちな
みに あおの うわぎで しんちゅうの ボタンつき おろしたての ものでした。

 ぼくは もう しぬんだな、 ピーターは おおつぶの なみだを ながしました。
 でも そのなきごえが たまたま やさしい すずめたちにも きこえて、 そし
て あわてて そばに とんできて あきらめないでと いうのです。

  4

 マグレガーおじさんが やってきて もってきた ふるいを ピーターの うえか
ら ぱっと かぶせようと しましたが、 ピーターは すんでのところで うわぎ
を ぬぎぬぎ あとに のこして にげだしました。

 そして ものおきごやに かけこんで じょうろのなかに とびこみました。 と
ってもいい かくればだと おもったのに みずが たくさん はいっているなんて。

 マグレガーおじさんには まるわかりでした。 ピーターは ぜったい ものおき
ごやの どこかに いる。 もしかすると うえきばちの なかかもしれない。 や
がて そろりと もちあげて ひとつずつ なかを みるのです。
 まさに そのとき ピーターが くしゃみを ――「はっくしゅん!」 マグレガー
おじさんが たちまち ちかづきます。

  5

 あしで ふみつけられそうに なりましたが、 ピーターは まどの そとへと 
とびだして ついでに うえきを 3つ たおしました。 まどが ちいさすぎたの
で、 マグレガーおじさんも ピーターを おいかけるのを あきらめて のらしご
とへ もどることに しました。

 ピーターは ほっとして こしを おちつけます。 いきも きれぎれ、 こころ
も ぶるぶる、 どっちへいったら いいのか ちっとも わかりません。 しかも
 じょうろのなかに いたので もう ずぶぬれです。
 しばらくして うろちょろ しはじめましたが、 とぼとぼ ―― とぼとぼ ―
― ゆっくりと あるいて きょろきょろ。

  6

 かべに ドアを みつけましたが、 かぎが しまっていて したを くぐりぬけ
ようにも ぷっくりした こうさぎの とおる すきまは ありません。
 おかあさんねずみが いしの とぐちを はいったり でたりして きのなかで 
まっている かぞくに おまめを はこんでいます。 ピーターは そのねずみに 
いりぐちへの いきかたを ききましたが、 くちに おおきな おまめを くわえ
ていましたので ねずみは なにも へんじが できません。 ただ くびを ふる
だけなので、 ピーターは なみだが でてきました。

   7

 それから おにわを つっきって かえりみちを さがそうと しましたが、 よ
けいに まよってしまいました。 やがて マグレガーおじさんが みずくみをする
 ためいけのところへ たどりつきます。 しろい ねこが きんぎょを じっと 
にらんでいて ぴくりとも うごきませんが ときたま しっぽの さきが いきも
のみたいに くねくねと していました。 ピーターは そっとしておくのが いち
ばんだと おもいました。 いとこの ばにばにベンジャミンくんから ねこのこと
は それなりに きいていたのです。

  8

 ものおきごやに もどろうとすると いきなり すぐそばから くわの おとが 
きこえてきました。 さっくり、 さくさく、 さっくり。 ピーターは しげみの
したを あたふたと はしりまわります。 けれども なんということも ないので
 すぐに でていって ておしぐるまの うえへ のぼり ようすを うかがってみ
ました。 まず みえたのが タマネギばたけを たがやす マグレガーおじさん、
 ピーターには せなかを むけていて なんと そのむこうに いりぐちが ある
のです!

 ピーターは おとも たてずに ておしぐるまを おりて ぜんそくりょくで は
しりだしました。 クロスグリの しげみのうら まっすぐ みちを すすみます。
 かどのところで マグレガーおじさんに みつかりましたが ピーターは かまい
ません。 いりぐちのしたに すべりこんで とうとう にわのそと、 もりに は
いれば あんぜんです。

  9

 マグレガーおじさんは ちいさな うわぎと くつを ぼうに ひっかけ からす
よけの かかしに しました。 ピーターは そのままずっと はしりっぱなしで 
ふりかえることもなく おおきな モミのきの おうちまで かえりました。

 もう くたくたなので うさぎあなの ふかふかした やわらかい つちの じめ
んに ねっころがると まぶたが すぐに おちます。 おかあさんは おりょうり
の さいちゅうで てが はなせませんでしたが、 みにつけていたものは どうし
たのかしらと くびを かしげました。 つい このあいだも うわぎと くつを 
なくしたっていうのに。

  10

 なんといったら いいのか、 ピーターは そのひの ばんは ずっと ぐあいが
 よくありませんでした。 おかあさんは ベッドに ねかしつけ カモミールの 
おちゃを つくってあげました。 ピーターへの おくすりと いうわけです!
「ねるまえに おおさじいっぱい のむこと。」

 かたや フロプシーと モプシーと カトンテルは ばんごはんに パンと ぎゅ
うにゅうと クロイチゴを たべました。

(おしまい)

※同作品はリレー朗読イベントで使用したもので、便宜上パート分けをしています。

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