参加型SNS『目覚めのリレー朗読』&『朗読原稿』

ウミガメと少女

「ウミガメと少女」

Fan Make Voice オリジナル作品

※転載禁止
※リレー朗読でつかった原稿のため、便宜上、パート分けしています

海には
色々な表情がある 。
良く晴れた空を鏡の ように 海面に 映して 、 どこまでも 青く広 がって 波 が 静かに 砂浜に 寄せ
てくる 穏やかな 海 。
満点の星空 と 海に映った 星が 一体となって 、 まるで 宇宙 空間 に 放り出されたよう な 漆黒に
染まった 不気味 な 海 。
今にも沈みそ うな 夕日が 海を 真っ赤に染めて 、 迫りくる 夕闇 の 青と 夕日の オレンジが 絶妙
に 交じり合った 美しい 海 。
本当に海 には 様々な表情があって 、 見る人の 心を とらえる 。

ざぶんと 海に飛び込むと 、 自分が 吐き出す 泡 の音以外は 聞こえなくなり 、 流れる 水の音だ
けが 耳の奥 に残る 。
上下左右がわからなく なるほど 青い 海に 包まれて 、 このまま 海 に 溶けて しまいそうになる 。
でも、その前に 息が苦しくなるので 、 太陽 が キラキラと 差し込む 方向へと 昇っていくのだ 。
「本当に 、 泳ぎが 上手 だな 。」
おじいちゃんはいつも 笑って 、 私を ほめてくれた 。
そう言ったおじいちゃんの方が もっと 泳ぎは 上手だった 。
一緒に海に潜ったことはあるけれど 、 私より ずっと 息が長く 長時間 海に潜っていられる 。
それに、海の中で 自由自在に 動き回って 、 とても 水の中にい るとは 思えない ほどだ。
大きな魚を 細い モリ 一本だけで 仕留め るのが 、 おじいちゃんの 漁の 仕方だった 。
昔はもっと 大きな魚 を獲ったり 、 サメとも 闘って 獲っていた といっていたが 、 今は そんな
ことはしない 。
ある一定 の 数 の 魚を 獲ってしまう と 、 おじいちゃん は 必ず 漁を 止めた 。 その日 獲る 魚の 量
を 決めて 、 それ以上は 獲らなかったのだ 。
「もっと たくさん 獲ればいいのに 。」
「今日はもう これで お終い 。 これ 以上 魚 を 獲ったら 、 海の 神様が 怒っ て しまうからな 。 」
そう言って必ず おじいちゃんは 海に向かって お 辞儀をした 。
「海の 神様 、 今日も ありがとうございます。 」
一日の最後に 海に感謝する 姿は 今でも 脳裏に 残って いる。


そんなある日、 私は いつもの ように おじい ちゃんと 一緒に 海に でかけたのだ。
波も穏やかで 、 風も 凪いで 、 静かな 海だった 。
遠く海の底まで 太陽の光が 降り注ぎ 、いつも 以上に 海の中は きれいに 透き通って見えた 。
すると、海の底に キラリと 光るものが 見 えたのだ 。
私は息を 深く吸い込んで 、 一気にその 光 る 物の所まで 潜っていった 。
小さな欠片のような物 は 、 差し込んできた 太陽の光 を キラキラ と 反射していた 。
サンゴの欠片 のか 、 貝 なのか わからない けれど 、 海の中では とても キレイ に 見えたのだ 。
私はその 欠片 を 海の 中 だけ ではなく 、 海から 出して 太陽の 光の 元で 観察 して みたく なった
のだ 。 それが もっと キレイに 輝くのではないかと 思ったからだ 。
私はこっそりと その 欠片を 家に 持ち帰ったのだ 。

そのことは
おじいちゃんにも 秘密にしていた 。 なぜなら、 おじいちゃんから 厳し く 言わ
れていたのだ 。
「海の中の物を 勝手に持ち帰っては いけない よ 。」
「どうして?」
「海の中の物は 、 海の 神様の 物 だから、 勝手に 持って帰ると 罰 が当たるぞ 。」
「おじいちゃん は 、 海で 獲った 魚を 毎日 持って帰ってる じゃない 。 」
「それは、 海の神様に ちゃんと 許しを 得て いる から だよ。」
「だから、 神様に 怒られないの ?」
「そう だ。 でも 、 欲張って たくさん 魚を 獲りすぎると 、 海の神様に 怒ら れるかも しれない
からな。」
そういって、
おじいちゃんは いつも 同じ 量の 魚だ けを 獲っていた 。
私はおじいちゃん に 言われ たことを 思 い 出したのだが 。
どうせ小さな 欠片だし 、 海の 神様も 見逃してくれると 勝手に 思い込んでいたのだ 。

その翌日、 おじいちゃんは 漁に出たまま 、 戻らなかった 。
みんながおじいちゃん を 探している 間中 、 私は 怖く なって 家で ガタガタと 震えていた 。
おじいちゃんが帰らないのは 、 私が 海で 拾った 欠片を 神様に 黙って 持って帰ってきたせい
だと 思ったのだ 。
私のポケットにしまってあった 欠片は どんどん 重くなって 、 大きくなっていっているよう
に 思えてきた 。
その日の夜になっても、 おじいちゃんは帰って来なかった 。
私は泣きたい気持ちを 振り絞って 、 夜の 海へ でかけた。
海は波も 静かで 黒く 沈黙していた 。 その 沖では おじいちゃんを 探す 船の 明かりが ぽつぽつ
と 動いてる 。
私は波打ち際まで 走っていくと 、 握りしめた 小さな欠片を 思い切り 海へ投げ返した 。

「ごめんなさいごめんなさい。。私が悪かったんです私が悪かったんです。。だからだから、、お願いですお願いです。。おじいちゃんをおじいちゃんを帰して帰して!」!」
遠く海の中に 欠片が 、 ぽちゃんと 落ちる音が 微かに 聞こえた 気がした 。
でも、翌日も 、 その翌日も 、 おじいちゃんは 帰って来なかった 。
そして、 自分のせいで おじいちゃんが 海 の神様に 罰を受けたのだと いう 思いが 、 私の中に
重く のしかかってしまった 。


それでも、
おじいちゃんが いなくなってから 、 毎日 海の神様に お祈りしている のだ。
それは、 岩場の祠に ある 海の神様 に お参りに行った 帰りだった 。
同級生の男の子たちが 岩場で 騒いでいる 。
「どうしたの?」
中を覗き込むと 大きな ウミガメ の首に ロープが 絡まって 動けなくなっている 。
更にその ロープの先が 岩場に 絡まって いるので、 ウミガメは 動きたくても 身動き できなく
たっている ようなの だ 。
「助けなきゃ !」
「こいつ 暴れ るから 、 なかなか取れないんだ 。 」
何度か男の子たちが 助けようとしたのだが 、 ウミガメが 暴れて なかなか ロープが 取れな い
ようだ 。
「大丈夫 、 暴れないで 。 あなたを 助けたいだけなの 。」
私はそ う っと ウミガメに 近寄って 、 暴れないように 話しかけた 。
すると、はじめは 手足を ジタバタ させていた ウミガメが 急に 大人しくなり 、 ジッとしてい
るのだ 。
そのチャンスを逃さないように 、 私は ゆっくりと 首のロープを 解いてあげたのだ 。
男の子たちの歓声が上がる中 、 ウ ミガメは 一目散に 海へと 帰って いった。
「まるで、 俺たち 浦島太郎 みたいだったな 。」
「だったら、 竜宮城へ 招待されるかもよ !」
本当にそうだったらいいのに、 そうしたら 乙姫様に おじいちゃんのことをお願いできるか
も しれないと 思ってしまった 。

その夜、 おじいちゃんのことが 心配で なかなか 寝付けなかったが 、 ベッドに入ると やけに
波の音が 大きく聞こえた 。
寄せては返す波の音を 近くで 聞きながら 眠りに ついたのだ 。
目を覚ますと、 体が 浮いているような 感覚 になって 、 あたりを見回そうとし た 途端 、 体が
くるりと回ってしまった 。
本当に宙 に浮いているようだ 。
ジタバタともがく 私の 目の前に 、 ウミガメが 顔を伸ばしてきた 。
「助けてくれ て ありがとう。」
ウミガメが宙に浮いていると 思ったが 、 よく 観察すると 私は 海の中に いるようだった。
でも、息は苦しくない 。
「私を 助けてくれた お礼に 、 神様が 願いを 叶えてくれる そうだ。」
「お願いです 。 おじいちゃん を 返して 」
ウミガメが言い終わらないうちに 、 私 は 願いを言った 。
「そ、それだけで いいのかい?」
「おじいちゃん を 返して くれれば、 それ だけ で 充分 です 。」
「そんなにおじいちゃんに 会いたいのかい ?」
「会いた いです !」
会って謝り たかった。 自分が 海の モノを 持ち帰ってしまったばっかりに 、 おじいちゃんが
罰を受けたのだから 。
「そんなことはないよ。」
まるで私 の 心の声を 見透かしたような ウミガメの 言葉に ビックリしていると 、 ウミガメの
姿が 海に溶けるように ぼやけて 、 次第に 人の姿へ と 変わっていったのだ 。
「おじいちゃん !」
それはずっと 会いたい と思っていた おじいちゃん だった。

飛びついてきた 私を 抱きしめて 、 何度も おじいちゃんは 背中を 撫でてくれた 。
「ごめんなさい! 私が おじいちゃんの 言いつけを 守らなかったから 、 おじいちゃんが 罰
を 受けちゃって 。」
「大丈夫だよ 。 ちゃんと 神様に 謝った だろう 。 」
「でも、 おじいちゃん 、 帰って来ないし 。」
「そうだね ー、 おじいちゃん 、 神様に 気に入られちゃったんだよ 。」
おじいちゃんの話によると、 おじいちゃんの 踊りを 神様が気に入ってしまって 、 なかなか
帰してくれないそうだ 。
「じゃあ、 この お守りを 一緒に持って帰ると いい。」
それは、昔 おじいちゃんが サメと闘ったときに 奪った 牙だと言っていた ものだ。
「これを 持っている限り 、 おじいちゃんが ずっと そばに いるから。」
その言葉が終わらない うちに、 私は 急に 息苦し く なっ て き た 。
周りが 本当の 海の中の様に 押し寄せてくるように 感じたのだ 。
どんどん胸が苦しくなって 、 大きく 息を吸い込んだ 瞬間 。
私は目が覚めた 。

気が付くとベッド の上で 大きく 呼吸を 繰り返していた 。
その枕元 には 、 おじいちゃん からもらった サメの 牙の お守りが 残っ ていた 。
そして、その 同じ 日 、 おじいちゃんの 船が 、 遭難 現場だと 思われていた 所から 少し離れた
場所 で 見つかった のだ 。
あの日から、 私は 海の 潜るたびに 必ず 神様の お礼を するようになった 。
海は美し く 穏やかな だけじゃなく 、 時には 怒り 荒れ狂う一面も あるのを 知ったか らだ 。
それを、今も 隣にいる おじいちゃんが 教えてくれた 。

※リレー朗読で使ったため、便宜上、パート分けしています

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